三国志_P.M.

横山先生の三国志を紹介するブログ。

双子のChimps

2017年10月21日、愛知県名古屋市にある東山動植物園で双子のチンパンジーが誕生した。

双子はどちらも雌で名前は現在募集中となっている。3月21日、愛称が決定する。

我々は双子Chimpsの現地調査を行った。

その日は3月初旬の週末だった。数日前、春一番の風が吹きようやく長い冬の終わりを肌で感じることができた。現地に到着したのは正午過ぎた頃だった。名古屋から満員の電車に揺られ少し気が病んだが、地下鉄の階段を上がると心持ちは穏やかになった。天気がいい。健やかな精神は心地よい日差しによって育まれる。入園料500円(大人)の支払いを速やかに済ませ、我々は園内地図を片手に歩き始めた。正門近くの噴水を越えたところから大きなサイが見えた。柵まで近づき「おい」と声をかけてみた。耳をパタパタと動かすだけで、ゴツゴツとした灰色の身体を動かそうとはしなかった。我々はゆっくりと園内の奥へ足を進めた。どうやらチンパンジーは北園にいるらしい。実に見難い地図であったが、位置関係はそうであった。北園へと繋がる橋を渡って、少し歩くと猿の鳴き声がする。 どうやら道は間違っていなかったようだ。我々は胸をなでおろした。緩やかな上り坂を越えて目に入ったのはゴリラ舎だった。ゴリラもなかなか見応えのある生き物だが、我々の目的はチンパンジーの現地調査であり、ゴリラ舎の横を無言で通り過ぎた。その隣にチンパンジー舎はあった。ゴリラ舎に比べこじんまりとした縦横約15mの無機質なコンクリートの壁に囲まれた場所である。雲が出てきたせいか高い壁のせいか少し薄暗く見えた。中央には赤茶色の鉄製の柱と細い丸太でできた櫓があった。直径5cmほどの縄が柱から柱へ、櫓から地面へとぶらんと垂らされていた。樹上で生活を営むチンパンジーのために取り付けらられたものだということはすぐにわかった。櫓の上にチンパンジーの姿が見えた。二人の大人のチンパンジーがぼうっとこちらを眺めている。二人の人間がぼうっとこちらを眺めている。何も言わず、時間だけがゆるゆると流れていった。

 

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